2024年6月のうたの日投稿

記録用に随時アップしています。

 

6/2「大」

楽しげな報せを思ひかへすときおほきな鳩にわれはなりたり

 

6/3「忘」

本心を隠しすぎたのかもしれずどこにも見当たらない忘れもの

 

6/4「虫」

大人なりに楽しんでゐる虫食ひの多い葉つぱのやうな会話を

 

6/10「自由詠」

強くなる雨に打たれてこの雨を比喩にしたいと思つてしまふ

 

6/12「決」

ゐない間に誰かが決壊したことは明らかだつたおだやか過ぎて

 

6/13「地」

嫌はれた理由は教へてもらへずに地上へと出るときの強風

 

6/14「満」

生きづらさとして括られることなく「満」の表示を受け容れてゆく

 

6/15「言」

発言を慎みなさい 挙げてゐる手のことごとく燃やされてゆく

 

6/16「髪」

新人は不満を語れるやうになり伸びてきた髪をさりさり触る

 

6/17「申」

気晴らしに橋を渡つて湧いてくるこゑを申告敬遠してゆく

 

6/18「様」

欲しいつて上手く云へなくなつてきた記憶のなかのお子様ランチ

 

6/19「束」

お別れのときに貰つた札束のどれがわたしのものなのだらう

 

6/21「疲」

川底のにほひを知つて腕のなかでかい疲労が寝息をたてる

 

6/23「源」

困りがほ見せないきみの水源にこはれるくらゐのブーゲンビリア

 

6/24「枕」

背中ばかり見てきた坂におれは寝る枕を高くしすぎたせゐで

 

6/28「奪」

見え透いた嘘をつかれて黒面をすべて奪つて白に変へたい

 

6/29「照」

週末を閉ぢる夕陽に照らされて次に会ふ日が決まらないこと

 

6/30「本」

きみはまだ背表紙のない本だつた走つただけで心配になる