記録用に随時アップしています。
6/2「大」
楽しげな報せを思ひかへすときおほきな鳩にわれはなりたり
6/3「忘」
本心を隠しすぎたのかもしれずどこにも見当たらない忘れもの
6/4「虫」
大人なりに楽しんでゐる虫食ひの多い葉つぱのやうな会話を
6/10「自由詠」
強くなる雨に打たれてこの雨を比喩にしたいと思つてしまふ
6/12「決」
ゐない間に誰かが決壊したことは明らかだつたおだやか過ぎて
6/13「地」
嫌はれた理由は教へてもらへずに地上へと出るときの強風
6/14「満」
生きづらさとして括られることなく「満」の表示を受け容れてゆく
6/15「言」
発言を慎みなさい 挙げてゐる手のことごとく燃やされてゆく
6/16「髪」
新人は不満を語れるやうになり伸びてきた髪をさりさり触る
6/17「申」
気晴らしに橋を渡つて湧いてくるこゑを申告敬遠してゆく
6/18「様」
欲しいつて上手く云へなくなつてきた記憶のなかのお子様ランチ
6/19「束」
お別れのときに貰つた札束のどれがわたしのものなのだらう
6/21「疲」
川底のにほひを知つて腕のなかでかい疲労が寝息をたてる
6/23「源」
困りがほ見せないきみの水源にこはれるくらゐのブーゲンビリア
6/24「枕」
背中ばかり見てきた坂におれは寝る枕を高くしすぎたせゐで
6/28「奪」
見え透いた嘘をつかれて黒面をすべて奪つて白に変へたい
6/29「照」
週末を閉ぢる夕陽に照らされて次に会ふ日が決まらないこと
6/30「本」
きみはまだ背表紙のない本だつた走つただけで心配になる