2024年10月のうたの日投稿

記録用に随時アップしています。

10月は初句か三句が6音の歌ばかりできて、不思議でした。

 

10/1「月」

子を叱る罪悪感を重ねればいつかは月に届くとおもふ

 

10/3「晴」

月曜にやることにしたひとたちの顔がすうつと晴れやかになる

 

10/4「好きな都市」

ホルモンは脂を落として大阪を最後に暮らした街にしてゆく

 

10/5「好」

好きだつてはつきり云へる面持ちでチラシが空へ旅立つてゆく

 

10/7「追」

衣替へしてゐる胸に湧きあがる雲をわたしは追放してゆく

 

10/8「今」

三回忌を終へて今年は母の好きなお菓子が供へられてゐること

 

10/10「自由詠」

溜めてゐた怒りをすべて吐き出した直後のひとの細くなる線

 

10/11「十」

着くまでの迷ひも消えて十字路をどう進んでも示すカーナビ

 

10/12「汁」

夢のなかいつもの道に一滴の墨汁のやうに花束がある

 

10/13「溜」

やればいいんだらう?と奴は頼んでもゐないみづたまりを踏んでゆく

 

10/14「食」

セーターに陽射しは刺さり食ひ合はせの悪い具材の想像をする

 

10/15「私」

私事ではありますが道端に犬を拾つて帰つてをります

 

10/16「好きなおやつ」

理不尽にキレ散らかしてゐることに気づいた妻が買ふオー・ザック

 

10/17「電話」

糸電話の糸をぴいんと張りながら異動を受けるか考へてゐる

 

10/19「自転車」

補助輪はいらんと言つてかるがると長針を越えてゆく秒針

 

10/20「社会詠」

お年寄りすら見かけないニュータウンのひび割れてゐる舗道を歩く

 

10/22「ぶれ」

インフルと思へば急にかたくなな脳の底からぶれてくる線

 

10/24「絡」

休職の理由だけ聞き脈絡のないやりとりを楽しんでゆく

 

10/25「坂」

昼食のプロテインバー坂道を転がり落ちる林檎になりきる

 

10/26「大人」

戻れないことをわかつてゆくための大人運賃のきつぷ一枚

 

10/28「靴」

泣きたさがすり減つてゐる革靴の底のはうから染みこんでくる

 

10/29「さて」

さみしさに呑まれてゐてもさてさてと腰を叩けば歩けちやふ足

 

10/30「糸」

ゆふぐれに外を眺める糸口を見つけて鼻を吹き抜ける風

 

10/31「動」

かなづちのやうな言葉に動じない金槌たちが「知らんわ」と言ふ