記録用に随時アップしています。
10月は初句か三句が6音の歌ばかりできて、不思議でした。
10/1「月」
子を叱る罪悪感を重ねればいつかは月に届くとおもふ
10/3「晴」
月曜にやることにしたひとたちの顔がすうつと晴れやかになる
10/4「好きな都市」
ホルモンは脂を落として大阪を最後に暮らした街にしてゆく
10/5「好」
好きだつてはつきり云へる面持ちでチラシが空へ旅立つてゆく
10/7「追」
衣替へしてゐる胸に湧きあがる雲をわたしは追放してゆく
10/8「今」
三回忌を終へて今年は母の好きなお菓子が供へられてゐること
10/10「自由詠」
溜めてゐた怒りをすべて吐き出した直後のひとの細くなる線
10/11「十」
着くまでの迷ひも消えて十字路をどう進んでも示すカーナビ
10/12「汁」
夢のなかいつもの道に一滴の墨汁のやうに花束がある
10/13「溜」
やればいいんだらう?と奴は頼んでもゐないみづたまりを踏んでゆく
10/14「食」
セーターに陽射しは刺さり食ひ合はせの悪い具材の想像をする
10/15「私」
私事ではありますが道端に犬を拾つて帰つてをります
10/16「好きなおやつ」
理不尽にキレ散らかしてゐることに気づいた妻が買ふオー・ザック
10/17「電話」
糸電話の糸をぴいんと張りながら異動を受けるか考へてゐる
10/19「自転車」
補助輪はいらんと言つてかるがると長針を越えてゆく秒針
10/20「社会詠」
お年寄りすら見かけないニュータウンのひび割れてゐる舗道を歩く
10/22「ぶれ」
インフルと思へば急にかたくなな脳の底からぶれてくる線
10/24「絡」
休職の理由だけ聞き脈絡のないやりとりを楽しんでゆく
10/25「坂」
昼食のプロテインバー坂道を転がり落ちる林檎になりきる
10/26「大人」
戻れないことをわかつてゆくための大人運賃のきつぷ一枚
10/28「靴」
泣きたさがすり減つてゐる革靴の底のはうから染みこんでくる
10/29「さて」
さみしさに呑まれてゐてもさてさてと腰を叩けば歩けちやふ足
10/30「糸」
ゆふぐれに外を眺める糸口を見つけて鼻を吹き抜ける風
10/31「動」
かなづちのやうな言葉に動じない金槌たちが「知らんわ」と言ふ